さいとうつづりの黒い森
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箱庭

オシロイバナのかおりを集めて
そこに柔らかなガーゼのハンカチーフを浸す

薄い桃色に染まったそれの
両端をそっと摘まみ
スカートを広げて

眩暈がするまで
足が絡まるまで



クルクル



クルクル



陶酔して回り続ける
その少女の足下では

ホムンクルスたちが
積み木遊び



三角形の角に
五角形の角を積みあげて
その上に
お城を建てようと

崩れてしまっても
同じことを繰り返して
彼らはいつの日かそのお城に住むことを
夢見てる



その隣に密めく夜闇には
低いところを
ひらひらと
薄い翅を上下にはためかせる
無数の蝶が舞う

鱗粉が落ちて
地面がぼうっと浮かび上がる



馬車は暗い荒野を駆けて行く
馬もひとも同じ
鋼のように鋭く澄んだ眼差しで
地平線だけを見て

蹄が大地を蹴り走る
荷が軋む
風が吹く
漆黒を赤が行く



お気に入りの絵本の中の文字たちは
次々に翻り
逆さまになったり
半透明になったり
明滅したりして
そのお話をすっかり変えて
最後のページでは
巻き毛の王様が
「この物語は終わらない」
叫んでる



それらを傍らに
あなたは映写機の横に座り
子供のように膝を抱えて
何も映し出さない乳白色のスクリーンを
ただずっと眺めてる



遠くへ

遠くへと

私はシャボン玉を吹いている


ナイトメア


目をつむり

辿る

惑う

想いは蝕まれる


やめて


やめて


悪い夢を見る

夜の続いた

ある日

森の途中

鈴を拾った






その夜

鈴を鳴らして

眠りにつくと

悪夢の向こうから

百の獏がやって来て

夢を食い

千の羊が

夜の終わるところまで

連れて行ってくれた






それから鈴を鳴らして眠る

夜が続いた






ある時

目覚めると

そこが何処なのか

わからなくなっていた


獏が夢と誤って記憶までも

食べてしまったようだった






それでも鈴を鳴らし続けた

そして羊に導かれ

それからいくつかの夜を越えた朝にはもう


小箱にしまい閉じておいたものも

ほとんどなくなっていた






大事そうに握りしめているのは

花の刻印された

古びたひとつの鍵


けれどその鍵で開ける扉のことももう

わからなくなっていた












ナイトメア




ただ一心に悪夢の去ることを願い

森を彷徨い歩いていた


千夜

鏡に映るの


アナタダレ






夢の飛沫


息を止めても






瞳の色を


指でなぞって






解けることはない


キミヲ






胸に降るの




流星












流星

煌めき
 
それはちゃんとしておかなくても

なんとかなるから






それはどうなっても

大丈夫だから






だから今は

いいから












無いものがあっても

受け入れて






ただいっぱいに

めいっぱい

あなたをして






大切を

抱きしめて












ローズマリー


姉妹


季節を少し戻して
春の始めのこと

富山に住む母が
お店をはじめた



母と母の妹
ふたりの

小さな小さな
少しレトロな
喫茶店







ドーラ







サイフォンで淹れるコーヒー
5日間かけて作る風変わりなカレー
パンケーキや
チーズとはちみつのピザや
ふわふわのたまごサンド
昔ながらのナポリタン

メニューは少しずつ更新中



ものづくりを中心に何でも屋の母は
料理研究家の助手をしていた経歴もあり
もともと料理上手なふたり

それでも
本当にお店を出すなんて







ここに至るまでいろいろな経緯があり
なんとかお店が始まって

お店は呼吸を始め
呼吸の仕方すらわからない
そんな始まりだったけれど

カレーを繰り返し食べに来てくれるひとがいたり
遠くから駆けつけてくれるひとがいたり
先日は地方局のテレビ取材を受け
その反響もあってこのところは毎日忙しくしているのだそう

でもまだまだこれからで
HPも何もない



私は離れていることもあり
報告を受けるばかりで
何も関わることのできぬまま

そうしたお店との距離感を少しさみしくも思いつつ
けれど母たちのお店なので
その土地に根付き
母たちの思うように育てばいい



体力の心配や
雪降る冬に訪れてくれるひとはあるだろうか

続けてゆくのはきっと
大変なことだけれど

まわりのひとたちに支えられながら
姉妹は日々を奮闘している







ドーラ





ドーラ





ドーラ







紅茶・ハーブティー党の私は
最近ようやく珈琲の美味しさがわかるようになったので
今度行った時にはオリジナルブレンドの珈琲を飲ませてもらおうと思う


古い歌


鳥は古い歌をつないでる

次の鳥から
次の鳥へ


歌は時折地上に落下しながら
この星をまわってる










ある男が荒れ地に落ちた歌を拾い上げた

耳にあてると
たちまち彼は崩れ落ち
号泣して

荒れ地を彷徨い何処かへ消えた






ある老婆が庭先に落ちた歌を拾い上げた

三日三晩見つめると
旅に出るとだけ言い残し
乾いたパンと杖だけ持って

それから彼女が戻ることはなかった






あるこどもの眠るベッドの横に歌が落ちた

こどもは目を閉じたまま微笑んで
そのまま時だけが経ち
こどもはやがておとなとなった

母親は静かに我が子の眠りを守り続けた






ある少女の細く白い手の中に歌が落ちた

少女は手を口元に近づけて
それをすうっと飲み込んだ
すると少女はまっすぐに飛び上がり

鳥となって行ってしまった










鳥は古い歌をつないでる

次の鳥から
次の鳥へ

そうしてこの星をまわってる


何が生まれて
何が壊れても

誰が泣いて
誰が笑っても

鳥は空を
飛び続ける


古く
遠く
終わることのない歌と


ワタシハシアワセ二ナリタイ

しばらくいろいろな想いをしていて

得るものがあり 
欠くものがあり


ゆらゆら


ゆらゆら


波間を漂い
何処へも漂着しないまま






もういい
このままここを離れよう

でも
止められなくて






文字で描けるものもある

留めること
沈めること
放つこと


そうしていた方が
きっと自分にいいから

つづりという名を理由にして






ポンヌフ